介護相談室から

2019/03/06 お知らせ

相談室の窓

のがわ介護相談室長
阿部 由紀子

 ケアマネージャーは、ケアプランを作成すると1件につき月1万円から1万3千円という報酬を得ます。何項目かの条件をクリアすると、この報酬に10%~30%という加算がつきますが、この条件の一つに「24時間連絡が取れる体制」があります。そこで私たちは、9時から17時の営業時間外は携帯電話に電話が転送されるようにして、携帯電話を当番で持ち、この「24時間体制」を取っています。そもそもケアマネージャーは相談・調整役であり、医師や看護師のように緊急事態に飛び出していくようなことはあまり想定されない…?とも言い切れないのが、対人援助です。
その日最後の職員が事務所を出ると、電話の転送が開始。業者さんからの事務連絡がぼちぼちと入ります。ある祝日の朝、デイサービスより一人暮らしの利用者さん宅にこれから迎えに行くと電話を入れたが出ない、倒れているのではないか、との電話が入りました。その人の普段の状況からやはり電話に出ないのはおかしい、最悪の事態を想定して近くの職員が利用者宅に向かいました。鍵が閉まっているので警察を呼んで室内に入ると、慌てて出かけた形跡が…。高齢で認知症が進むと、普段の様子からは予測できない行動をとることがあると再認識した出来事でした。結局この人は、姉が具合が悪いとの知らせを聞いて、デイのことをすっかり忘れ、飛び出して行ってしまっていたのでした。
またある日の夜、認知症の利用者さんの息子さんから、母が「死んでやる!」と包丁を持って騒いでいる、今父がなだめているがどうしたら良いか、との電話が入りました。認知症の周辺症状であり、かねてから専門医の受診または入院に繋ぐタイミングを計っていたところでありました。家族が病院に連れて行ける状況でないならば、警察を呼び「自傷・他害の恐れがある」とのことで入院させてもらうしかない、と伝えました。この人は精神科に入院し、薬の調整がつき、今は施設で穏やかに暮らしています。
相談・調整役の「緊急電話」、これが活躍するために大事なのは、利用者さんやそのご家族との日ごろからの信頼関係と、誰が当番であっても適切に対応できる職場内での情報共有です。これは「10%の加算」にとどまらず、もっと大きなものを、私たちにもたらしていると感じます。できれば持ちたくない携帯電話…でもこれにより仕事の「やる気」や「楽しさ」が倍増していると信じて、これからも続けていこうと思っています。