在宅医療を支える

2019/05/08 のがわ訪看ST

ある看取りのお話

 ひとり暮らし、難病にて歩けない。酒とタバコと音楽を愛する。出来る事は自分でがんばっていたけれど徐々に立つ事さえも難しくなる。排便コントロールが上手くいかず失禁となり緊急コールが鳴る。「はぁ〜っ」と繰り返される本人のため息を聞きながら真夜中にケアをする。退室時は必ず「お疲れ様でした」と声を掛けてくれる。こんな状況に落ち込む様子を見せるけれど酒とタバコと音楽が彼を癒す。ネットで観るドラマも楽しみでその話をしながらケアをする。
しかし栄養状態が元々良くないので褥瘡が出来てしまう。エンシュア(栄養補助食品)が処方されるも「甘すぎる!吐くから無理!」と二度と手をつけない。褥瘡は悪化していく。熱も出始めたため入院し治療することを勧めるが「嫌だ。ここがいい。このまま死んでもいい。」と。医療職としてはそれでいいの?入院すれば褥瘡は良くなるかも、でも本人にとって入院はつらいよね、本人の希望だし本人の人生…と悩む。のがわ介護相談室のケアマネ、診療所と共に相談を重ね、家で看ていくことを確認。そしてケアセンターのがわのヘルパーも入れて連携体制を整える。
食べられなくなっても酒は飲む。痰が絡んでもタバコは止めない。
一人で家に居ることがつらくないか聞くと「それはない」と言う。意識が朦朧としてきて自分でタバコを持てなくなっても「吸う?」と聞くとうなづき二本指を立てる。口に咥えさせる。
翌日の午後にヘルパーが訪問すると息をしていなかった。

のがわ訪問看護ステーション
所長 岩井美香