ケアの分断をなくし、患者と医師をつなぐ!①

2023/04/12 お知らせ

ケアの分断をなくし、患者と医師をつなぐ!

金子惇先生(右)と岩井美香所長

かかりつけ医がゲートキーパの役割を
むさし小金井診療所で毎月第4土曜日に診療をお願いしている金子惇先生の研究内容が、毎日新聞(2022年11月10日付)に「かかりつけ医を身近に」の記事で掲載されました。今後、高齢化社会が加速する中、かかりつけ医の役割はどうなっていくのか訪問看護師・岩井美香施設長が聞きました。

岩井 先生いつも診察ありがとうございます。昨年の新聞記事の中で、都市部の高齢者の調査から、いくつもの医療機関を受診する「ケアの分断」を指摘されていますね。

金子 沖縄の離島から赴任し、都市部は複数の医療機関を利用している方が多いと思いました。離島ではひとつの診療所を受診するのが当たり前で、東京では複数の医療機関にかかられていると感じたのが研究のきっかけです。1ヶ所にまとめないといけないということではなく、ある程度かかりつけ医でまとめると大病院の先生の負担も減るし、患者さんも診療回数や移動負担が軽減されるので、個人的にはいいのではないかと思い調査しましたが、平均3・4ヶ所。総合病院の複数の診療科に行っても1カウントなので、もっと行っているはずです。他の国に比べても多い。

岩井 記事の中では、イギリスは家庭医を決めておくシステムと紹介されていますね。

金子 日本では患者が自分で病院を選べるけれど、診療科が違っているなどのデメリットもあります。ヨーロッパは、登録制で患者は迷わない。医師は、診療所で治療するか、他を紹介するか、を振り分ける訓練をしています。開業時に循環器、消化器などの概念がありません。検査はかなり限られていて、診療所には胃カメラすらなく、血液検査の結果も翌日です。

岩井 日本でかかりつけ医をつくっていくにはどうすればいいでしょうか?

金子 今、かかりつけ医が議論されているのは、コロナの発熱外来でかかりつけ医に診てもらえないことがあるからです。かかりつけ医を定義し、その機能を果たしているなら行政からプラスでお金がもらえる仕組みなどが必要です。患者と診療所で合意して登録し、条件を満たしているかかりつけ医をリスト化し、診療所もそれを広報できるなどが現在議論されています。日本では、現状どこでも受診でき、CT、MRIは人口当たりの台数も多く、経営を維持するために検査することにもなってしまう。国としては医療費がかさむので、役割分担したり、必要な人だけが検査を受けるほうがコストとしてはいいのではないか。相談窓口として診療所があってほしいと行政は考えています。

岩井 訪問看護師の立場からも、かかっている病院が多いと主治医は誰だろうとか、先生同士の情報共有で困ることもあります。

金子 みなみうら生協診療所で外来を診ていた時に、複数の病院にかかっているご夫婦がいて、奥さんはご主人の病院にも付き添い大変そうでした。日本では診療所と病院でできることの切り分けがあいまいで、医師個人の経験によることもあるので、より患者のわかりにくさを生んでいる。ヨーロッパでは、紹介のルールがありますが、日本では入院先がみつからないこともあります。先ほどのご夫婦の例でいうと、診療所・病院の混在を整理し、ご本人達にも理解していただきました。現状の日本で医師ができることは、切り分けて整理することではないでしょうか。

岩井 患者も看護師も遠慮して医師に言えないことがあります。先生のような視点をもって接していただけると安心です。

金子 病院側は診療所をよくわかっていなかったりするので、診療所側から手紙を書き、これはできますと声をかける等、医師もトレーニングを積む必要があります。

岩井 大病院よりも診療所の医師のほうが、生活面の様々な情報が入ってくるので、患者へのアドバイスもしやすいですね。

(②に続く)